世界最高峰・欧州のサッカー界が、最終盤を迎えている。
イタリアでは早々とユベントスが優勝を決め、英国では、日本代表・岡崎慎司が活躍したレスターが「奇跡の優勝」を果たした。
スペインでは、バルセロナが今朝方に優勝を決め、ドイツでは、終盤までもつれたものの、バイエルンが優勝を決めた。
残された、いわゆるビッグマッチは、レアル・マドリーvsアトレチコ・マドリーのチャンピオンズリーグ決勝だけである。
今夜、最後の試合、倒すべき相手であるバイエルン・ミュンヘンとの戦いが残されている。
ドルトムントのジレンマとトゥヘル采配
これまで、長きにわたってクラブを支え、欧州の強豪として復活させたクロップ監督が、昨シーズンの最下位争いを演じた責任をとり、チームを去った。
立て直しを求められて就任したトゥヘル新監督だったが、またしてもリーグ優勝を巨人バイエルンに阻まれ、チーム歴代最多勝ち点に迫りながらも、優勝を果たせなかった。
かつて香川が4シーズン前に在籍していた頃の栄光(リーグ2連覇、欧州最高峰チャンピオンズリーグ準優勝)に比べると、この結果は確かに物足りない。
2位とはいえ、リーグ優勝をまたしても宿敵バイエルンに奪われ、チャンピオンズリーグより格下のヨーロッパリーグもベスト8で終えた。
残されたタイトルは、ヨーロッパリーグや国内リーグより格下のドイツ国内杯=DFBポカールだけである。
だが、クロップなき後、混乱の中にあったクラブを、ふたたび優勝争いを演じさせたトゥヘル新監督の手腕は素晴らしかった。
そもそも今期、就任1年目での優勝争いを演じることは難しい、と思われていた。
クロップ流サッカーでは、選手の疲労が蓄積され、連戦でのパフォーマンスが低下した。また、戦術が研究され、昨年は特に苦戦を強いられ、その結果最下位争いを演じるようになっていたからだ。
トゥヘル新監督は、自身の尊敬する、宿敵バイエルンの名将ベップのスタイルを巧みに取り入れ、ドルトムントに新たな強さをもたらした。
ゲーゲンプレスによるショートカウンターを繰り返すクロップスタイルを継承しつつも、失点を防ぐ堅実な守備という新たなスタイルを築き、勝ち点を積み上げた。
確かに直接対決の直前に、「我々はまだバイエルンのレベルには達していない」と話したり、これまでうまくいっていたスタイルを急変させて、リーグ優勝が遠のくような結果をもたらすなど、ネガティブな言動もあった。
だが、スピーディーでスリリング、見る者を興奮させたとしても、それがなかなか結果にはつながらないジレンマ——ドルトムントは限界を迎えていた。トゥヘル新体制は、それらを解消して、バイエルンやバルセロナ、レアル・マドリーなどのメガクラブに並ぶ資格があることを証明しつつある。
「バイエルンは強く、欧州No.1を狙うにふさわしいチーム」である。今季限りでの退任が決まっている名将ベップが、更にその強さに磨きをかけている。
この現実を直視ぜすして、さらなる高みへは到達できない。最強バイエルンに伍す力を得るために、今期トゥヘルはチームに様々な貢献をしている。
因縁の相手 バイエルン・ミュンヘン
今夜行われる決勝の相手は、そのバイエルンである。
勝てば、今季初タイトルであり、相手に不足はない。
バイエルンに勝てれば、強いチームであると証明することができる。そのために勝つ、というだけではない。
サッカーファンなら周知の話だが、近年のドルトムントとバイエルンミュンヘンには、因縁が多い。多すぎる。
香川の大活躍で、リーグを2連覇されると、即座に大補強を行い、リーグの盟主の座を奪還した。さらに、その翌年には、ドイツの至宝と呼ばれる大黒柱であるゲッツェが、優勝争いを演じる敵チームへの禁断の移籍を果たした。さらにその翌年にも、リーグ得点王のレヴァンドフスキがまたも禁断の移籍を果たした。
ポカール決勝進出を果たした後、わずかながらもリーグ優勝の可能性のある中で、ドイツ代表、攻撃サッカーでセンスあるパスを引き出し、国際的にも大人気のDFであり、ドルトムントのキャプテンであるフンメルスを獲得したと発表した。
フンメルスは、バイエルンユース育ちで、自信の武者修行にとドルトムントに移籍した。その後、キャリアを重ね、14年ブラジルワールドカップでドイツを優勝に導くなど華々しい実績をあげている。
自身がミュンヘン出身、家族もミュンヘンにおり、恋人もミュンヘン出身の中、禁断の移籍を決めた。
かつて、ゲッツェが移籍する際には、批判も行った、にもかかわらずである。
ファンは、ブーイングで応えた。8万人収容の専用スタジアムはおよそ異様な光景となった。許されざる裏切りだからである。
だが、スポーツ選手は、時のスター選手に憧れ、スターチームに憧れながら、自身の人生を憂い・悩みながらスポーツに捧げる。かつて憧れたアイドルに、自分自身がなれる場所に立てる機会を自ら失うというのは、大変につらいことだ。
その勝利に価値はあるか?
それに、バイエルンの立場に立ってみると、ドルトムントは、強豪チームの中の1チームという位置付けにすぎない。バイエルンに課せられた使命は、少なくともリーグ制覇であり、そして、チャンピオンズリーグでの活躍、タイトル取得である。
今シーズンのバイエルンは、リーグ優勝に加え、チャンピオンズリーグでも、ベスト4という結果を残すことができた。大満足というほどでないにせよ、まぁまぁの満足というところではないか。
格下のポカールのタイトルは、あればあれでよいが、すべてを賭けるほどの存在ではあるまい。リーグ優勝を達成できて、選手たちは満足しているだろう。
だから、ドルトムントが宿敵バイエルンにたとえ勝てたとしても、あまり価値はないかもしれない。「たまたまだ」と揶揄されるかもしれない。
キックオフは今夜午前3時。
ドルトムントのキャプテン・フンメルスが去る最後の試合。
大変楽しみな戦いである。
ドルトムントと香川真司がんばれ。
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